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商業登記漫歩 平成18年6月12日号(20号)


ニューヨーク・ワシントンDC会社法5日間の旅
( 出 張 結 果 報 告 )
桐蔭横浜大学法学部客員教授
有限責任中間法人商業登記倶楽部
代表理事 神 崎 満 治 郎 

1 はじめに
 5月24日から30日まで、会社法関係調査のため、駆け足でニューヨークとワシントンDCを廻りましたので、その結果を以下のとおり報告します。

 なお、今回の出張は、わが国会社法の世界にも、最低資本金規制の撤廃、目的の具体性の要件の撤廃等予想をはるかに超える規制緩和と自己責任の大波が押し寄せてきましたが、それは、結局のところ会社法のアメリカ化であると思われること(経済の国際化に伴い、企業の経済活動に関する法律である会社法も、必然的に国際化の道を歩みざるを得ないが、結局それは会社法のアメリカ化であろう。)、そして、それが更に進むことはあっても後退することは考えられないことから、アメリカにおける会社登録(登記)制度と登録後の公示制度について、極めて高い関心を有していたところ、たまたまコロンビア大学公共政策大学院に留学中の二男から、現地の弁護士とのコンタクトがとれるのでニューヨークに来ないかという誘いがあり、絶好のチャンスとニューヨーク出張を決定した次第です。


2 アメリカの会社法
 アメリカでは、各州ごとに会社法が制定されており、しかも各州が企業誘致等のため自州の会社法の優位性を競い合う傾向にあります。その中でも、企業にとって最も有利な会社法がデラウエア州の会社法といわれています。何故有利かと言えば、@手続きが簡素である、A高度に洗練された会社法専門の裁判所がある(陪審制度をとらず、集積された判例の利用が可能、加えて企業に有利な態度を取る裁判所としても知られている。)、B税金が安い、ということなどです。ちなみに、ニューヨーク証券取引所に上場されている企業の半数以上がデラウエア会社法に基づいて設立された会社といわれています。なお、現在では、アメリカ弁護士会の作成した“モデル会社法”に基づき会社法を制定している州が多いとのことです。

 ところで、アメリカには、日本のような登記制度はなく、州当局に届け出る登録制度ですが、本店の所在地に関係なく、自分の好きな州の会社法に基づいて会社を設立することができます。例えば、ニューヨークで事業を営む会社であっても、デラウエア会社法に基づいて会社を設立することができます。ただし、この場合には、デラウエア州の州務長官に基本定款を届け出て、デラウエア州に代理人を置き(アメリカでは、会社の設立手続きは、弁護士、会計士に依頼すると費用が高いので、ほとんどがこれを専門にする会社に依頼し、その会社に代理人になってもらうとのことです。)、デラウエア州に税金を支払う必要があるうえ、ニューヨークでも税金を支払う必要がありますので、もっぱら大企業に適したシステムといえます。

 なお、デラウエア州は、アメリカ最初の州で、人口約70万の小さな州(面積で2番目、人口で4番目に小さな州)ですが、全米一の法人数(大企業のデラウエア州への一極集中)を誇り、ニューヨークやワシントンDCまで電車で約2時間程度のアメリカ北東部の州で、駐日事務所もあります。そこで、“デラウエア会社法”は、デラウエア州最高の特産品ともいえます。


3 デラウエア会社法に基づく会社の設立手続き
 デラウエア会社法に基づく会社の設立手続きのポイントは、以下のとおりです。

 (1) 基本定款(これが申請書を兼ねることになる。)を作成し、デラウエア州当局(法人部)に提出すればよい。
    基本定款は、@商号、A本店及び代理人、B目的、C授権株式数および額面株式1株の金額, D発起人の住所、氏名程度で極めてシンプル、公証人の認証は不要です。
 (2) 類似商号の制度がある。
    同一州内で同一又は類似の商号の会社は登録できません。日本では廃止された類似商号の制度があります。
 (3) 商号の仮登録制度がある。
 (4) 目的は、「あらゆる適法な事業」でよい。

    目的としては、州が定めた基本定款(申請書)に “to engage in any lawful act or activity”というように、すでに記載されています。
 (5) 代行サービス会社が申請書(基本定款)を作成
    基本定款は、郵送でもよいが、デラウエア州内の代行サービス会社が作成し、提出するのが一般的とのことです。司法書士のような制度はありません。
    なお、代行サービス会社は、デラウエア州のホームページで紹介しています。
 (6) 会社設立後の役員変更等の登録は不要(ただし、州によって異なる。)。
 (7) 年1回、年次報告書の提出と納税が必要。
 (8) 会社の存在証明等は、州務長官事務局法人部が発行。
 (9) 特急料金(1000ドル)を支払えば、1時間で設立完了



4 収集した資料
  次の資料を収集しました。

 (1) アメリカ会社設立基礎知識(iSee NY ウエブサイトから)
 (2) なぜ、数多くの会社がデラウエア州で設立されるのか
 (3) デラウエア州用の設立定款(Certificate of Incorporation)の書式とデラウエア州へ提出・保管されている設立定款(認証付)
 (4) デラウエア州から発行される会社の存在証明(Certificate of Good Standing)
 (5) デラウエア州用のフランチヤイズ税、年次報告書
 (6) マサチュセッツ州の設立定款(Articles of Organization)の書式等
 (7) デラウエア州州務長官法人部ウエブサイト

  @ ホームページ(Division of Corporation)
  A 書式等(Corporate Forms and Certificates)
  B 手数料一覧(Corporate Fee Schedule)
  C 特急サービス(Expedited Services)
  D 会社情報の入手方法(Accessing Corporate Information)
  E 商号調査(Name Availability Search)
 (8) デラウエア州で紹介されている現地代理人(Agents)
 (9) Corporation Service Company(設立代理人1社)のウエブサイト・手数料一覧
 (10) 米国会社設立をサポートする日本企業のウエブサイト
 (11) 米国法人設立に際して、現地代理人、設立代行業者を利用することについて(ウエブサイトから)



5 ニューヨーク諸事情

 (1) 時差と気候
  日本とニューヨークの時差は13時間(現在、サマータイム実施中)。ニューヨークまでの飛行時間は12時間30分。日本の5月24日午前11時は、ニューヨークの5月23日の夜10時ということになります。したがって、5月24日午前11時に成田をたち同じ5月24日午前10時30分にニューヨークのJFK空港に着陸しました。 緯度的には青森と同じですが、滞在中は夏日でした。 

 (2) 出入国審査
  アメリカ入国では、目的、滞在日数を聞かれた外、指紋採取と知らない内にデジカメで顔写真が撮影された。出国の際は、有無を言わせず、ベルト、靴、上着も脱ぎ透視検査、これがアメリカ流というところです。

 (3) ニューヨークという街
  ニューヨーク市は、マンハッタン、ブルックリン、クイーンズ、ブロンクス、スタッテン島の5つの区から構成されていますが、超高層ビルの林立するところは、マンハッタン地区です。そして、このマンハッタンという街は、世界の経済の中心地、東京の数倍の人、人、人…、車、車、車…。これを、簡潔に表現すれば、喧騒の街、首の痛くなる街(林立する超高層ビルを見上げていると…)、交通ルール無視の街(信号を守る人もタクシーもいない)、人種のるつぼの街、道路の整備状況の悪い街、清掃状況の悪い街、子供から大人まで肥満の人が多い街ということになります。ただし、これも、いい意味でいえば、活気あふれるビジネスチャンスのある街ということになります。

 (4) ニューヨークのタクシー
  まず、捕まえることが大変、初乗り2ドル50セント、チップ10〜15パーセント、運転手は、ほとんど外国から移住して間もない人で、あまり安心できない。運転手に、ビル名や会社名をいっても大体わからない。ただし、マンハッタンの街は、碁盤目のようになっている(縦の大通りがAvenue=Av、横の通りがStreet=St)ので、初めにStをいい、次いでAvをいうと大体わかるようである。

 (5) ニューヨークの鉄道・地下鉄
  それほど危険性はない。ただし、長距離列車の出発ホームは、10分位前までわからないので、要注意。停車駅のアナウンスもないので、これも要注意。

 (6) ニューヨークのホテル
  JTBのガイドブックに一流と書いており、ANAのツアーデスクもあるので安心して予約したセラトン・ニューヨーク・ホテル&タワーズは、日本でいえば二流の中位のホテルでした。考えてみれば、各社のツアーデスクがあるということは、そのホテルに団体客が多く、大衆的なホテルということでしょう。ただし、ホテルの料金は日本より高い。もともと日本的サービスを期待することが間違い。

 (7) ニューヨークの和食
  マンハッタン地区に結構あり、最高に美味しい。東京よりも美味しくて安い(特に高くはないという意味)。日本そばは、当職が東京で食べたそばより、はるかに美味しいかった(原料のそばは、カナダの直営農場で生産)。本来東京にあるべきものが東京になく、ニューヨークにあるという感じ。食べたお店は、そば日本(3回)、関西割烹竹生、浪花(鍋焼きうどん)、いろは(定食屋)、なだ万白梅(帝国ホテルのなだ万より安くて美味しい)。日本人のフロンテイア・スピリットに万歳。

 (8) ニューヨークの酒・焼酎
  何でもあるという感じ。ちなみに、焼酎の“いいちこ”1杯6ドル(約670円)、“吉四六”1杯6ドル95セント、日本酒の“八海山”1合17ドル75セント、“男山”1合10ドル50セント。


6 視察・見学

 (1) ワシントンDC
  政治の街ワシントンDCは、経済の街ニューヨークからアムトラックの電車で3時間30分。途中、会社法の街デラウエア州の北のはずれを通過する(?)。

  ホワイトハウス、国会議事堂は炎天下、外から眺めただけ。ニューヨークより落ち着いて静か。広い路上に駐車している車の中に、トヨタ車が多いことに驚く。

 (2) スミソニアン・国立自然史博物館・国立人類博物館
  地球誕生から46億年間の自然界に存在するすべてのものを網羅した世界最大の博物館。入場料無料。世界最大127カラットのダイヤも展示。

 (3) メトロポリタン美術館
  この美術館(世界四大美術館の一つ)のすごさは、時価何十億円もする作品をガラスで覆うこともせず、ロープも張らず、手で触ることのできる近距離に無造作に展示していること。


7 出張中の電話・ホームページの対応
  出張中は、会員の皆様には大変ご迷惑をおかけしました。出来る限りご迷惑をおかけしないようにと、日本国内からダイレクトにかけられる携帯電話(番号は、当職の番号と同じ)と事務所の電話はこの携帯電話へ転送にセットし、インターネット接続用のパソコンを持参して出かけましたが、何分にも、日本の午後2時はニューヨークの深夜の午前1時というように、時差の関係から電話がかかってきても、十分な対応は困難でした(深夜、何本かの電話がかかり、寝ぼけまなこで電話を取ろうとしてベッドから転落しそうになった)。ホームページの質問(結構多くの質問が寄せられました。)への回答については、持参のパソコンをインターネットに接続し(これが一苦労でした。)、とりあえず第一次的回答をさせていただきました。

以上 


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