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商業登記漫歩 平成24年5月21日号(48号)


◇ 再び、4月1日申請の特例民法法人の移行による設立の登記における「就任年月日の移記」についてです。今回で、移行事項は「就任年月日」か「重任年月日」かの議論は終ります。漫歩534号をお読みになったT先生から及びO先生から追加情報のご提供をいただきましたので、これも踏まえてこの問題を総括いたします。
  平成20年9月1日民商第2351号民事局長通達は「移行による設立の登記においては、登記官は、職権で、すべての理事につきその就任年月日を記録するものとする。この場合においては、特例民法法人の理事が名称変更の時に退任しないときにあっては、その就任年月日(法人の成立時から在任する理事にあっては、法人成立の年月日)を移記し、理事が名称の変更の時に就任したときにあっては、名称の変更の年月日を記録しなければならない。
  なお、監事については、理事と同様に、整備法の施行の際現に存する旧社団法人又は旧財団法人に置かれている監事は法人法に基づく監事とみなされた(整備法48条1項)が、旧民法法人では登記事項とされていないことから、申請に基づき、その就任年月日を記録することになる。」と述べています。

◇ ところで、登記官に移記又は記録を命じているのは、法令ではなく、通達であり、しかも移記又は記録を命じているのは「就任の年月日」であり、「就任又は重任の年月日」ではありません。しかし、移記という用語を用いている以上、それは特例民法法人の登記簿に登記されている登記事項(「年月日就任」又は「年月日重任」)をそのまま移記するのが登記実務のルールと思われます。そこで、登記されている事項が「年月日重任」の場合、登記官は「年月日重任」と移記した(以下、「重任説」という。)のでしょうか、それとも「年月日就任」と移記した(以下「就任説」という。)のでしょうか。
  なお、申請人サイドからは、重任の場合は、「重任説」で処理するよう強い要望がなされているようです。

◇ 申請人サイドから「重任説」の要望が強いのは、2年に1度の割合で「重任」として登記してきた理事(公益社団・財団法人の理事は、おおむね地域の著名人です。)を就任として登記することに違和感があるためと思われます。
  ところで、「重任」とは、任期満了退任と同時に同一人が時間的間隔を置かずに同一ポストに就任することで、この場合には、本来であれば退任登記と就任登記を同時に申請すべきところですが、申請人と登記所の負担の軽減を図るために、これらを一括して「重任」として処理することにしたもので、重任は、申請人と登記所の負担の軽減を図るために考案された実務の知恵といえます。つまり、「重任の年月日」とは、「退任の年月日」及び「就任の年月日」ということになります。そこで、重任した理事の「就任年月日の移記」とは、文字通り「就任の年月日」を移記することでしょうか、それとも「重任の年月日」を移記することでしょうか。
  この場合、参考になるのが商業登記規則65条2項の規定です。同条2項は「本店を他の登記所の管轄区域内に移転した場合の新所在地における登記においては、取締役、会計参与、監査役、代表取締役、特別取締役、委員、執行役、代表執行役及び会計監査人の就任の年月日をも登記しなければならない。」と規定していますが、この場合の法務省の「申請書様式・記載例」1-20は、商業登記規則65条2項に規定する「就任年月日」として「重任の年月日」を記録しています。

◇ この問題について、重任説で処理している法務局について、会員の皆様から以下のとおり情報のご提供をいただきました。ただし、以下に記載のない法務局が、すべて「就任説」というわけではないと考えます。
1. 理事について…札幌法務局、福島地方法務局、東京法務局、さいたま地方法務局、長野地方法務局、宇都宮地方法務局、富山地方法務局は重任説で処理。
2. 監事について…札幌法務局は、就任説(「重任」として申請したが、「就任」として処理された)。その他の法務局では、おおむね申請どおり処理された(就任として申請した場合は、就任として処理。重任として申請した場合は、重任として処理。)ようです。しかし、監事の問題は、監事が登記事項とされていませんでしたので、「移記」はありえません。そこで、監事の場合も理事とのバランスを考え、@理事と同様の処理をする考え方とA2351号通達の示す文言のとおり「申請に基づき、その就任年月日を記録する」考え方があります(札幌法務局の見解は、重任とは、任期満了退任と同時に同一人が時間的間隔を置かずに同一ポストに就任することであるので、登記事項とされていなかった監事を初めて登記する場合に、重任として記録することには疑問があるということではないでしょうか。)。私見は、札幌法務局と同一の見解ですが、理事とのバランスを考えると、理事と同様の処理をする(「就任の年月日」でも「重任の年月日」でも受理する。)のも実務の知恵といえるかもしれません。
  以上総括しますと、この問題については、理事の問題は、登記官の職権による移記の問題であり、監事の問題も、いずれの処理方法でも、今後の処理に影響を与えるほどの問題ではなく、登記事務の全国一元的処理を図るために法務省が統一見解を示せば足りる問題と考えますので、是非法務当局の統一見解をお願いしたいと考えます。

◇ なお、法務局の取扱いについて異論のある方は、差し支えなければ情報提供をお願いします。(満)



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