商業登記漫歩 平成26年11月4日号(56号)

◇ 10月18日・19日、「東北支部セミナー」を開催しました
 10月18日(土)13:00から19日12:00まで、山形県米沢市の白布温泉・西屋旅館において「東北支部セミナー」を開催しました。東北支部は、東北6県の司法書士会所属の司法書士で構成され、会場も東北6県の持ち回り、夜の懇親会は、東北6県から持ち寄った地酒を酌み交わしながら、司法書士と商業登記を語る熱い夕べです。東北支部長は、日司連常任理事の峯田文雄先生、各単位会の会長さんもご参加くださり、東北支部の皆様、ありがとうございました。
 ところで、米沢市は、温泉も多く、民法学の父と言われた我妻栄先生(若い司法書士の皆さんには、余り馴染みのないお名前かもしれませんが、小職位の年齢の者で我妻先生の「民法講義」及び「民法案内」にお世話になったことのない者はいないと思われます。)のご出身地であり、「我妻栄記念館」もあります。法律関係のセミナー開催地としては、最高の立地でした。

◇ 「我妻栄記念館」を見学して思う
 我妻栄記念館は、我妻先生の生家を改装したもので、先生の旧制米沢中学時代の勉強部屋から東大法学部長時代の机と椅子、東京帝国大学法学部助手に採用されて以来の辞令、民法講義の改定版原稿等等、貴重な資料が沢山ありますので、まだ見学されていない方は、是非見学してください。見学者の名刺もファイルされており、司法書士や法務局関係者、法曹界の著名人の名刺もわんさとあります。

◇ 銘酒十四代は何種あるかご存知ですか
 セミナー終了後、峯田先生のご好意で山形市内の「居酒屋・味山海」で十四代をご馳走になりました。何とその数23種類。日本一の居酒屋です。最高の十四代は、いまだお目にかかったことのない「黒縄」、これは、まさに絶品でした。しばらく「居酒屋・味山海」の夢をみそうです。

◆ 定款に相続入社の規定がない清算中の合資会社において、清算人である唯一の無限責任社員が死亡した場合の取扱いについて
(質問)
 社員が死亡した場合に相続入社の規定がない清算中の合資会社において、清算人である唯一の無限責任社員が死亡した場合、どのような登記を申請すればよいか。
(回答)
 本問を、旧商法に基づいて設立された合資会社が会社法施行後に解散したという前提で、以下のとおりまとめてみました。
 1 無限責任社員の持分の承継による相続人の加入の登記
 会社法675条の「清算持分会社の社員が死亡した場合又は合併により消滅した場合には、第608条第1項の定款の規定がないときであっても、当該社員の相続人その他の一般承継人は、当該社員の持分を承継する。」という規定と会社法608条2項の「一般承継人は、持分を承継した時に、当該持分を有する社員となる。」という規定の趣旨から判断して、相続による入社の登記は可能と解されます。『全訂詳解商業登記〈下巻〉』(311頁)および『商業登記ハンドブック〈第2版〉』(628頁)も、相続による入社の登記は可能と解していますので、その前提で、登記官と協議されてはいかがでしょうか。ただし、昭和29年4月12日民甲770号通達が適用されるかどうかという問題はあります(通達は、相続人の加入の登記は不要と解しています。)が、これは会社法制定前の問題です。
 2 清算人の選任の方法
 清算人の地位は相続の対象にはなりませんので、清算人が死亡した場合には、後任清算人の選任が必要になります。そこで、この場合には、会社法647条1項3号の類推適用により、無限責任社員の相続人(相続人が2人以上いる場合は、相続人間の協議によって、定められた社員の権利を行使する者)が清算人を選任し(整備法70条4項)、当該清算人が、①無限責任社員の死亡による退社および相続人の加入、②清算人の死亡による退任および清算人の就任の登記を申請することになります。ただし、登記官が、昭和29年4月12日民甲770号通達適用説を主張される場合は、裁判所が清算人を選任することになります(会社法647条2項)が、裁判所が清算人の選任をしない可能性があることも登記官に伝える必要があります。